寒冷地における木造建築
本当に有効な北海道の寒冷地仕様とは?

モデレータ: 日経BP社日経ホームビルダー 編集長 村田真氏
パネリスト: 工学院大学建築学科 教授 宮澤健二氏
YOUトピアカワムラ 専務取締役 川村隆氏
城東テクノ株式会社 取締役 近江戸征介氏


村田: 木造住宅の耐久性を考えると、柱脚、床下、基礎この3つが重要性が見えてきますね。実際の現場において、基礎の劣化対策はどのようにしていますか?

川村: 木材が湿気を含むと菌が寄ってくるので、乾燥させた状態を維持することが、劣化防止につながります。木材の土台とコンクリの基礎部分を絶縁して、内部結露や外からの漏水が起きないようにします。

村田: 壁は通気工法によって断熱材の湿気を下げていることを考えると、床下の湿気も同様ですよね。

近江戸: 床下湿度は常に70%くらいあり、非常に高い状態です。それでも木を乾燥させるためには、コンクリートと木を絶縁しただけでは不十分。そこに効果 的に気流を働かせることが重要なポイント。腐朽も蟻害も、乾燥状態を保てれば、未然に防ぐことができます。

村田: 北海道ではプラ系断熱材を外側に張るという基礎断熱のやり方が多いようですが、川村さんのところは違っていますね。Jotoのキソパッキング工法による全周床下換気と断熱方法の関連性について教えてください。

川村: 基礎の内側に断熱材を張って外側は打ちっぱなしにしているので、モルタルとか仕上げ材のクラックや剥離というクレームが生じる可能性がありません。そして凍結深度のベースラインまで、基礎の内側に断熱材を打ち込みます。そうすると、凍結深度に接したコンクリートからの伝熱冷却を防げるので、床下の地熱を十分に活用できるという仕組みです。

近江戸: そうですね、北海道ほど地熱をうまく使える土地はないと思っています。例えば、換気口に雪がかぶっても、地熱の噴き出しが雪を融かすと同時に、土台の側面 にある水切りにかぶった雪も融かし、壁通気工法の通気入り口を確保します。つまり床下だけでなく、壁体内の湿気を排湿するという機能も十分に発揮できる。こうした、地熱の利用を前提に考えた基礎作りも大切ではないでしょうか。

村田: 床下空間の温熱環境と基礎構造の関係について、どうお考えですか?

宮澤: 木を腐らせないためには、床下全体を乾燥させる必要はありません。床面 に近いところの木部だけを効率よく乾燥させれば十分。そのためには高基礎が適しているし、内断熱にするのも効率がいい。このように除湿効果 を追求した結果として、基礎に穴を開けなくてもいいという構造の合理性とも結びついています。理想的なカタチと言えるでしょう。

村田: 床下すぐのところに気流を流すことが重要なんですね。

近江戸: 上端部のスリットで全周から出入りする気流のつながりさえあれば、わずかな気流の移動でも、下から突き上げるように上がってきた気流が、それを横方向にさらに押し、木部に最も近いところに気流が働きかけるようになります。 床下の気温がいくら高いといっても、北海道では10度前後です。そして室温は22〜26度。よく最初から室内温度を26度に目いっぱい暖房されるというケースがありますが、これは逆効果 。床と天井で温度差があると、タテの気流が生じて風が肌をなでるので、薄ら寒く感じます。床面 温度が22度前後で、天井の近くの温度が23〜23.5度というくらいの温度差に室内の温度を保てば、床から天井にかけて気流の動きを緩やかにできるのです。

村田: 布基礎の耐震レベルについては、どうでしょうか?

宮澤: 北海道は凍結深度が深いので、基礎梁を大きくとっていて、安定しています。ただし震災の調査をしていくと、構造の安定性もさることながら、腐朽が大きな問題になっていますね。

近江戸: 阪神淡路大震災があったとき、キソパッキング工法の住宅があの地域に472棟建っていました。その472棟は、ズレも基礎のダメージも全く聞いておりません。実は震災で倒壊した住宅の82.7%は、脚部腐朽が原因で、瞬時に倒壊したのです。 今後地球温暖化で、湿度も高くなりつつあります。すると北海道における高気密・高断熱住宅の見えない木部の保全が重要になるのではないでしょうか。通 換気・通気層・床下換気を取り入れて、なおかつ乾燥状態を保つため、多くの情報を活用していかなければなりません。 こうして耐久安全性を確保することは、すなわち耐震安全性を確保することにもなるのです。

村田: 皆さま、本日はどうもありがとうございました。


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