
企画担当者&開発担当者に話を聞きました
点検口は邪魔なもの?!現場の課題を「フチなし」で解決へ

― フチのない床下点検口を企画したきっかけを教えてください。
企画担当者:床下点検口は住宅の健康状態を確認するために欠かせないものですが、工務店さま・お施主さまによっては邪魔になると感じる方もおられ、点検のしやすさは二の次で、目立たない場所に設置されることも少なくありません。この現場の課題を解決できないか、と考えたのが企画のきっかけです。
当社の既存の床下点検口は、施工のしやすさと性能面でこれまで多くのお客さまから支持されてきました。樹脂製のフチは角の繋ぎ目のない一体成型で、素足で踏んでも冷たくない点も高評価をいただき、順調にシェアを伸ばしてきました。ただ一方で「もっと目立たない点検口が欲しい」というお声も一部のお客さまからいただいていました。また、デザイン性や素材にこだわりのある工務店さまが、現場造作でフチのない納めに仕上げていること、そういった会社さまには樹脂素材をチープと捉えられてしまい、なかなか当社製品の採用に至らないということも、当社営業担当者から聞いていました。
そこで、これまで追求してきた高気密型の床下点検口の性能を持ち、現場造作のフチのない仕上がりの意匠を合わせ持った“フチのない高気密な床下点検口”を製品化できないかと考えました。現場の課題解決につながり、さらには性能×意匠という付加価値によってJotoの床下点検口のブランド力をより高めることができるのではないかと思ったんです。
“逃げ”がきかない難しい条件で気密を確保しながら美しい納まりを追求

― 設計・開発上はどんな苦労がありましたか?
開発担当者:床下点検口に限らず、部材と部材がぶつかるところというのは、きれいに仕上げるのが難しい部分です。フチなしにするということは、それまでフチで隠せていた部分があらわになって“逃げがきかなくなる”ということ。その中で、どれだけ安定した精度が出せるかがカギでした。考えれば考えるほど簡単にはいかないことがわかってきて、納まりを決めるまでに随分と苦労しました。
私たちメーカーがお届けする工業製品の場合、一つ一つの部品の寸法にはどうしても多少のバラつきが生じます。また各現場でも下地材の厚みなどにバラつきがあります。製品化する際は、そんな様々な誤差が発生する状況下でも、気密を確保しながらフタと床の高さが揃うようなつくりにしなければいけません。この高さ調節機能を確立するのが特に難しかったですね。気密材の反発力や樹脂枠の変形具合を確認して最適な形状を模索するなど、何度もトライ&エラーをくり返しながら調整していきました。
いかに現場の職人さんの負担を抑えられるか意匠×性能×手間を抑えた施工方法を実現

― 特にこだわったのはどういうところですか?
企画担当者:現場の職人さんの負担をいかに少なくするかというのが、大きな課題でした。フチなしになることで、どうしても現場の職人さんの手間は増えてしまうのですが、なるべく施工の後戻りや後加工のないようにする、というのはこだわって話し合いましたよね。
開発担当者:そうですね。施工の流れを重視してあれこれ考えました。仕上げ材に逃げがないので、フチのある床下点検口と比べると職人さんの負担は増えてしまいますが、一から現場で造作することを考えると、特に下地の施工の部分でかなり手間を抑えることができているのではないかと思います。
床下点検口として見えてくる部分は取手・床材・開口となる線のみとなりすっきりとした印象です。そのため、配置や床材の割り付け、仕上げ材の加工などに目が留まり易く、設計や施工でのセンスや技が光る製品となっています。ある意味、料理をしていただく素材として、性能の担保がある製品を提供することで、性能にも意匠にもこだわりたいと考えている現場の課題を解決できるFUCHINEは、当社が掲げる「ユニークな建材で長持ち住まいをささえます。」というコーポレートスローガンを体現できたJotoらしい製品になったと感じています。
かつてない製品に大きな反響こだわり派のニーズを満たす新たな選択肢に

― 発売後はどんな反応がありましたか?
企画担当者:発売後はFUCHINEを目当てに展示会に来てくださる方が非常に多かったですね。「仕上がりや施工方法、性能が確保できるのかなどを現物で確認したい」というお声をよく聞きました。SNSで投稿してくださった方もいて、話題にもなりました。
当社の床下点検口をお使いいただいているお客さまからは「こだわり派のお施主さまが増える中で、選択肢のひとつとして提案できるね」というお声を多くいただいています。実際、大手ハウスメーカーさまで建設中のお施主さまからの指定で採用されたケースもあったようです。また、これまで当社の製品を使ったことがなかった工務店さまにも、FUCHINEをきっかけに興味を持っていただけることが増えていると聞いています。さらに公共の施設で使えないかといった住宅以外の問い合わせもあり、やはりこの“フチ”に潜在的な課題があったんだなと改めて実感しています。
開発担当者:これまでにない製品なので、賛否あるだろうということはある程度想定していましたが、具体的にどんな反応が見られるかは、発売してみないとわからない部分もありました。発売後、おかげさまで多くの反響があり、実際に製品を見た方々の様々な意見が集まってきています。まずはたくさんのお声をいただくことを目的と考えていたので、その目的には達しつつあるかなというところです。これらを今後につなげていきたいと考えています。
様々な潜在課題の解決に貢献できる可能性もブラッシュアップを重ねてより良い製品に
― 今後の展開はどのように考えていますか?
企画担当者:その前に、製品企画段階で、施工方法や納まりに対してのご助言や、施工検証にご協力を賜りました皆さまに心より感謝申し上げます。
今後の展開としては、まずは標準型という形でスタートを切りましたが、すぐに「断熱タイプが欲しい」というリクエストを多数いただいたこともあり、既存の高断熱型と同等の断熱性能を持ったFUCHINEを2025年3月に発売します。
現製品で完成とするのではなく、製品を発売したことで寄せられているたくさんのご意見・ご要望一つ一つと向き合い、設計者さま・施工者さま・住まい手の皆さまに更にご満足いただける製品にし、床下点検口の定番になるよう製品を育てていきたいです。更なる開発には今回以上に高いハードルがあると思いますが、挑戦を続けていきたいですね。
開発担当者:ひとまず完成はしましたが、まだまだできることはあると考えています。当社の製品でロングセラーになっているようなものは、最初に発売してからお客さまのご要望やよりよい機能にするため、何度も設計を変えて今に至っています。この製品も同じようにお客さまのお声に真摯に向き合って、どんどんよい製品に育てていけたらと思いますね。