外から新鮮な風を送り込んで小屋裏を呼吸させ、熱気や湿気を排出することで、住宅の長寿命化に貢献している軒天換気材。暴風時にも換気孔からの雨水の浸入をしっかり防げることが大前提となる建材です。当社の従来品は高い防水性と十分な換気能力を有してはいたものの、使用箇所に制限がありました。今後の課題としては軒の有無に関係なく、片流れ屋根の水上側や、切妻屋根の妻側、無落雪屋根など、あらゆる箇所に使用できる汎用性のある製品を開発したいという思いがありました。
また、外観の一部を担う建材でありながらデザイン性が軽視されているマーケットの現状に一石を投じたいという思いがありました。一つひとつの建材を見直し、より良い住まいづくりへの貢献をめざしてきた私たちにとって、意匠性を向上させた軒天換気材を開発することは自然な流れでした。外観の美しさを追求していくと、軒天換気材はその存在自体を消し去ることが理想です。必須性能である高い防水性と換気能力を併せ持ちながら、見付け寸法を限りなく小さくする挑戦が始まりました。
製品企画にあたり、これまでの軒天換気材にはなかった2つの特徴をフリーヴには設けました。
1つ目は、換気部材と受け材を一体化させたこと。これにより下地材が不要になり施工が容易になりました。また、フリーヴは樹脂素材のため、ビスや釘で破風と胴縁のどちらにも直接固定することが可能です。換気材本体の下に外壁がくるので出幅も抑えられます。
2つ目は、内部に3枚の水返し板を設けて高い防水性を実現したこと。住宅金融支援機構が定める軒天換気量の基準をクリアするためにはある程度の製品寸法が必要になりますが、施工の自由度を考慮すると製品自体の高さを抑えることが求められます。そこで複数の水返し板を組み合わせ換気経路を蛇行させることで水滴が内部に入り込まないようにし、かつ製品寸法を最小限にとどめられる内部構造を思いつきました。また、換気孔は十分な換気面積を確保できるようL字型にする工夫を施しました。その結果、取り付け後の見付け寸法はわずか15mmとなり、軒下から見上げても影と同化して存在をほぼ感じさせないサイズにまで縮めることができたのです。
しかし実際に製品化する段階で思わぬ困難にぶつかりました。開発の初期段階では長尺物に対応しやすい押出成形で検討していました。しかしフリーヴの複雑な内部構造は押出成形では対応できないため、射出成形で試みることになりました。しかし断面の金型があれば生産可能な押出成形とは違って、射出成形では製品全体を覆う金型が必要になり、コスト面と生産環境に問題が生じました。製品の長さを短くすれば解決できる点は多々ありましたが、現場でジョイントするコストや手間がかかってしまいます。そこで、お客様の立場で使い勝手を第一に考え、足場の上で持ち運び扱いやすい長さを十分に検証し、金型を作成できる最大限の長さで製品化することにしました。
防水や断熱など住宅を守る建材を企画開発する際には、その建材単体ではなく、建物全体を覆うラインを意識して考える必要があります。どこかに隙間や弱点があると、家全体の機能が成り立たなくなってしまいます。一分の隙も作らずにバリアを張りめぐらすようなイメージをもつことが大切です。住宅の美しさに関しても同様で、どこか一カ所に無頓着な建材がついてしまうと、家の外観全体を損ない、ひいては街の景観までに影響を及ぼしてしまうと私たちは考えます。
「一つひとつの建材が、高性能で美しい家を支える」という城東テクノのものづくりの姿勢を具現化した、軒天換気材フリーヴ。住まいの長寿命化に貢献する高い性能を確保しつつ存在感を消し去ることで家全体の美しさを守るという大胆な発想は、住む人が長く付き合える家とは何かについて真剣に向き合ってきた私たちだからこそ生まれたものかもしれません。フリーヴに込めたこのような思いを高く評価していただき、「しろあり保証制度」に引き続き、2年連続となるグッドデザイン賞を受賞することができました。
とはいえ、まだまだ改善の余地があるのではないかという検証を怠ってはいません。このフリーヴに関しても細やかな改良をすべく、すでに社内では動き出しています。私たちはこれからも、住宅デザインの向上に貢献できるような優れた建材づくりに地道に取り組んでまいります。