木造住宅の外壁の内側は、室内からの湿気の流入や断熱材の欠損により、壁体内結露を引き起こす可能性が高いとされています。外壁と躯体の間に風の通り道を作り、壁体内の湿気を外部に放出する外壁通気工法を行うことによって、スムーズな通気が壁体内結露を減らし、住宅を長持ちさせることができるのです。水切りから入った空気の出口となる通気見切は当社の定番製品ですが、城東テクノには、ロングセラーに対しても「これで満足」という考えはありません。定番だからこそ、お客様が今以上に使いやすくなるように改良を重ねています。
従来品の通気見切を使っていただいているお客様から、「バルコニー下部につくオーバーハングと通気見切のラインをぴったり合わせるために、もっと見付けサイズの小さな通気見切がほしい」というご要望をいただきました。当社のオーバーハングの裏側の見付け寸法は10mm、従来品の通気見切の見付け寸法は30mm。大きさが違うために生じるズレ幅に不満をお持ちでした。当社は建材メーカーとして性能と施工性を重視した製品づくりをしていますが、今回は「意匠性」を追求するという、新たな試みが始まりました。
通気見切の設計のポイントは、見た目と水密性です。外観を損なわないようなデザインにしながら、雨の吹き込みを最小限に防がなくてはいけません。従来品の通気見切は換気孔が正面から見えないデザインにしてありますが、吹き込んだ雨が抜けやすいように通気見切内部の空間を大きくするため、見付け寸法を30mmとしています。今回は、その課題を意識しながらも、見付け寸法を大胆にサイズダウンしていきました。 目標は、オーバーハングの10mmの見付け寸法に対して、さらに2mm小さい8mm。なぜかというと、現場では、突き付け部分を厳密に合わせるのは難しく、ズレが生じる可能性があるからです。しかし、この2mmのサイズダウンで、難易度はグンと高くなってしまうのです。折り加工はベンダーに専用の刃物を差し込んで折り目を付けるのですが、折り込む角度を決めるにはその刃の厚みが影響するため、細かい調整が非常に難しくなります。また、一辺を均等の幅に折る作業も、寸法が微細になればなるほど、端の方が難しくなります。手で紙を折る場合に、端の方を細かく折るのが難しいことからも想像していただけるでしょう。正直、10mmなら、ここまで難しくはありませんでした。しかし「ズレが生じず美しく仕上がること」と「施工する方に、少しでも余裕をもたらすこと」が、私たちが決して譲れなかった大きな「2mm」だったのです。
8mm化を実現させるために、極限まで刃を薄くしました。継ぎ部分にかぶせる役物の加工も非常に難しくなったため、何度も何度も調整を重ねました。加工技術の限界に挑んだ開発となりましたが、「お客様の声に耳を傾け、より良いものを作る」という目標をチームで共有しているので、「難しいけれど絶対にできる」という気概をもって開発することができました。当社がこれまでに培ってきた経験やノウハウを集結させることで、オリジナルの形状を実現できたと自負しています。
はじまりはとても小さな、外装部材同士の「角の取り合い」の違和感。しかし、今回これを解決したことで、今後はこの流れから派生した製品も開発中です。
本製品は一見、従来品のバリエーション違いのようですが、実は「発想の転換」が生み出した新機軸であり、それゆえに、家づくりのさらなる可能性を引き出す役割を担っています。「細かい部分の見た目にもこだわって、満足のいく家づくりをしたい」と考えるお客様に共感していただける、当社独自のスタンスを形にした製品となりました。また、同じタイミングで笠木換気材が新たに発売したことによって、水切り~通気見切、オーバーハング~笠木換気材と、壁体内通気に必要な部材をすべて同色で揃えていただけるようになり、外装部材をトータルでご提案することが可能となりました。
当初のご要望をくださったお客様からは、大変ご満足したというお声をいただきました。今後は、施工の簡便化、耐久性をより高めていくなど、さらに改良すべく努めていきます。性能・施工性・意匠性、それぞれのバランスを保ちながらより良いものづくりをしていく、当社の開発にはゴールはないのです。