床下の断熱方式には「床断熱」と「基礎断熱」があります。
近年は省エネルギーの観点や、輻射冷暖房や全館空調採用時の床下空間利用の観点から、基礎断熱工法が増えています。基礎断熱工法には高い断熱性能を確保しやすいというメリットがありますが、一方でデメリットもあります。基礎の外に断熱材をつける基礎外張断熱の場合、蟻道が発見しづらいためにシロアリ被害の発見が遅れ、深刻化しやすいのです。また、基礎断熱工法では床下が「室内」の扱いとなるため、シロアリ対策に薬剤を使用することは避けたいというお客さまの声もありました。
そこでJoto キソパッキング工法で培ってきた経験を生かし、基礎断熱工法においても薬剤に頼らない手法で、しろあり保証ができないかと模索を始めました。シロアリを薬剤によって駆除するのではなく、シロアリの侵入を防ぐという発想のもと開発を進め、「基礎断熱工法気密パッキン」と合わせて使用できる「基礎断熱工法用シロアリ返し」と「基礎断熱工法用断熱ブロック」が生まれました。
躯体へのシロアリの侵入を防ぐためには、基礎天端までで防がなければなりません。まず初めに、「基礎断熱工法用シロアリ返し」の開発に着手しました。シロアリ返しを設置する基礎および断熱材の天端は不陸が生じやすい部位です。不陸によってシロアリ返しと基礎の間に隙間が生じてしまうと、そこからシロアリが侵入するおそれがあります。そこで、シロアリ返しに不陸に追従するような特性を持たせるため、硬質系の材質ではなく、軟質系の材質を選択しました。しかし軟質系の材質にすると、今度はシロアリが食い破って貫通するおそれが生じます。この課題を解決するため、薄板板金、PET+エラストマーや不織布、柔らかく毛が生えたような材質など様々な材質を選定し、京都大学生存圏研究所の吉村剛教授らの協力を得ながら、実験室および実際の環境に近い屋外試験場でシロアリの貫通試験を行いました。設計条件や要求事項などをふまえた最適な材質の選定ができるまで検証は試行錯誤の連続でした。最終的にシロアリ返しの材質として、不陸に追従する最適な軟質PVCを選定しました。裏面にはアルミ蒸着テープを組み合わせることでシロアリによる貫通を防ぐ製品となりました。
しかし、「基礎断熱工法用シロアリ返し」は、設置するだけでは不陸に追従できません。基礎天端や断熱材天端へしっかり圧着させることが必要です。また、基礎と土台の間には断熱欠損を防ぐための断熱材も必要でした。そこで、断熱欠損の防止として「基礎断熱工法用断熱ブロック」を用意し、留め付け具を付属させることにしました。この留め付け具で「基礎断熱工法用シロアリ返し」を基礎天端や断熱材天端に圧着させることにしました。「基礎断熱工法用シロアリ返し」の上に「基礎断熱工法用断熱ブロック」を置き、留め付け具にビスを締め込むことで留め付け具が下がります。断熱ブロックの固定と同時に、シロアリ返しを圧着させることで、不陸に追従する仕組みです。
留め付け具は一見シンプルな形状ですが、この形状になるまで、紆余曲折がありました。
開発過程では、シロアリ返しと断熱ブロック、水切りを一体型にしたものや、大引きで押さえつける立体的な留め付け具など様々な形状で試作しました。しかし、なかなか形状が決まりませんでした。理由は基礎断熱工法の納まりです。
基礎断熱の納まりには「基礎内張断熱」と「基礎外張断熱」があります。留め付け具はどちらでも問題なく施工できなければなりません。
留め付け具のサイズが大きいと、基礎外張断熱の場合に外張断熱材の受け材や水切りに干渉し、障害物となります。開発担当者は何度も現場に足を運び、最適な形状を考えては試作を繰り返しました。ある時、現場調達の外張断熱材の受け材となる木材に目が留まりました。この木材にビスを打ち、留め付け具にできないかと思いつきました。その形状は両方の納まりで問題なく施工ができ、最終的な製品形状が決定しました。留め付け具の素材は樹脂を、色はブラウンを選定しました。これは木材を意識したわけではありません。現場で施工するときに、墨出し線が見える色の方が施工しやすいと施工者目線で考えたためです。
外張断熱材の受け材よりヒントを得たこの留め付け具は、基礎外張断熱時には外壁の外張断熱材の受け材になる機能も兼ねています。施工時に、断熱材の受け材を現場で調達する必要がなくなり、施工の簡略化にも貢献しています。
当社は2017年4月に「Joto基礎断熱工法」を確立しました。同工法では外基礎に「基礎断熱工法用気密パッキン」と「基礎断熱工法用シロアリ返し」「基礎断熱工法用断熱ブロック」の3部材を使用し、内基礎に「キソパッキン」または「キソパッキンロング」を使用します。
シロアリは、基本的に暗くジメジメした床下を好む習性があります。基礎断熱工法のように密閉された床下空間はまさにシロアリが好む環境です。反対に乾いた場所や空気の流れを苦手とします。
Joto基礎断熱工法は外基礎部をしっかり気密し、内基礎部は空気を循環させて計画換気を行うことで、シロアリが嫌う風通しの良い床下環境を作ります。また、万が一、シロアリが侵入してもシロアリ返しにより躯体への侵入を防ぎます。
このJoto基礎断熱工法の確立と大手損害保険会社のバックアップにより、シロアリ被害のリスクが高いと言われる基礎断熱工法でも、「しろあり保証1000Joto基礎断熱工法」が実現しました。
竣工後10年以内のJoto基礎断熱工法を採用した新築住宅に蟻害が発生した場合、累計1,000万円を限度に賠償責任補償額の給付を保証します。
保証には諸条件があります。詳しくはWEBページをご覧ください。
「しろあり保証1000Joto基礎断熱工法」と指定部材はお客様からご好評いただいております。
しかし、私たちは製品が完成し、発売したことがゴールではありません。実際に施工いただいたお客様の声から新たな製品を開発していきます。次回は同指定部材からさらに発展を遂げた新たなパッキンの開発ストーリーをお届けいたします。次回もお楽しみに。