当社の主力商品のひとつであるキソパッキンシリーズ。「Jotoキソパッキング工法」で床下換気をする際のシロアリ対策として玄関区画の気密確保の重要性を啓蒙し続け、「気密パッキンロング」として具現化してきた当社の考えが、現在では随分と浸透してきています。長持ち住まいを支える建材づくりに取り組んできたスタンスが住宅業界のスタンダードになったケースといえるのではないでしょうか。また、普段キソパッキンを採用いただいているお客様が、基礎断熱工法に「気密パッキンロング」を導入される事例も増えてきています。このような状況にも対応できるよう「気密パッキンロング」を改良しようという声が社内から上がりました。
「気密パッキンロング」は、基礎断熱工法の基礎外周部に敷き込む場合でも十分な気密性能を発揮しますが、外周部という長いスパンでの使用を想定していないため、基礎断熱工法の現場では次のような困りごとが起きている可能性がありました。土台敷きの際に土台の仕口部分を木づちなどで叩いて嵌め込むため、気密パッキンが横ズレしパッキン同士の接合部に隙間ができやすいこと。連結する箇所が多くなるため、施工時に気密漏れが生じる可能性があること。専用の調整板を用意していないため、基礎の不陸に対応しきれていないこと。そこで、基礎断熱工法に必須な高い気密性を保持しつつ施工性を向上させた気密パッキンの開発をめざして、今回のプロジェクトはスタートしました。
施工面での大きな改良点として、凹凸の爪で連結するジョイント式を採用しました。ジョイント式にしたことで土台敷きの際に気密パッキンが横ズレしにくくなり、接合部の気密性を確保しやすくなりました。
また、アンカーボルトが芯ズレしていた場合やホールダウンなどが干渉した場合にはパッキンを切り欠く必要が出てきてしまうため、今回のリニューアルではアンカーホールの幅を若干広げました。しかし、ただ広げるだけでは土台接面面積が不足して、住宅全体の荷重を支える土台の木材が「気密パッキンロング」にめり込んで住宅が傾く危険性があります。そこで、アンカーホール幅を広げた分の土台接面面積を確保するために、製品自体の幅を従来の102mmから105mmに変更したのです。これには、昨今の大地震の被害調査結果などを考慮して、土台接面面積に関する社内設計基準をより安全重視で見直した背景があります。
また、現場での墨出し作業を考慮し、2×4工法の際に墨出し線がラインに沿っているかを製品横からのぞき込んで確認できるよう、セットゲージの幅を89mmにしました。さらに専用の調整板も開発。加えて、適正な強度と安全性を維持したまま約15%の軽量化も実現し、より現場で扱いやすい製品になりました。
今回は企画から製品化まで約1年という短期間だったこともあり、社内の各部署とのスピーディーな連携が開発における必須条件でした。リニューアルにあたっては製品を生産するための金型や気密材を自動で貼り付ける専用の設備などが多数必要になります。新しい製品を作る時には既成概念を見直さねばならないケースも多々あります。そのため企画時には、製作段階で起こりうる問題点について各部署と打ち合わせを重ねながら細やかに調整することが重要です。
「気密パッキンロング」は直線やコーナーで連結した場合でも気密性を確保する必要があります。しかも現場で簡単に施工できる扱いやすさが求められます。そこで、これまで製品小口に貼っていた気密テープの代わりになる嵌合方式について慎重に考え、連結部の形状を何パターンも試作し、気密性を保持できているかどうか試験を重ねて検証しました。
また、土台接面面積を確保するために、気密材を貼り付ける溝の幅を今までの8.5mmから5.0mmに縮小しました。これにより3.5mm分の接面面積をかせぐことができたのですが、5.0mm幅の溝に7.5mm幅の気密材を貼り付けることは難易度が高く、不良品が出やすいというリスクもありました。そこで量産する上での課題や問題点について各部署とアイデアを出し合い解決に向けて模索しました。このような各部署の理解と協力があったからこそ、基礎断熱工法に対応した気密パッキンの製品化が実現し、そして結果的には従来の「気密パッキンロング」もリニューアルできたという想定以上のゴールにたどりつくことができたのです。
基礎断熱工法で従来の気密パッキンロングを採用されているお客様に、この「基礎断熱工法用気密パッキン」をご案内すると、さまざまな改良点を評価していただき非常に喜んでいただけます。「業界の定番となった製品をさらにブラッシュアップするとはさすが城東テクノですね!」と言っていただくと、私たちもとても励みになります。
床断熱工法で床下を換気する「Jotoキソパッキング工法」による「しろあり保証制度」は、現在登録住戸数68万棟に及び、2015年度にはグッドデザイン賞ベスト100を受賞しています。ご好評いただいているこの「しろあり保証制度」を、シロアリのリスクが高い基礎断熱工法にも対応させることは私たちにとって長年の課題でした。基礎断熱用気密パッキンとその他の部材を組み合わせた工法でシロアリに対する実験と検証を重ね、ついに2017年4月より、基礎断熱工法でも「しろあり保証制度」を運用できる体制が整いました。今回の製品開発を通じて、またひとつ、お客様の長持ち住まいを支えるお手伝いができるのではないかと思っています。
これからもお客様のご要望やお困りごとにしっかりと向き合い、より良い住まいづくりに貢献できるよう努めてまいります。