キソ点検口後付けタイプ

製品開発ストーリー

浴室の気密断熱をより確実に。基礎打設後でも取り付けが可能なキソ点検口。

さらなるリクエストに応えて従来のキソ点検口をリニューアル。

「断熱等性能等級4」に適合する省エネ住宅を建てるにあたり、浴室区画全体で気密断熱を確保する方法があります。この場合、ユニットバス下部の点検をするための人通口部分の気密断熱をどうするかが課題となっていました。余った断熱材で簡易的に蓋をするのでは気密性が確保できません。しかも点検時に蓋を壊して潜りこむため、クズがでる・再び塞ぐ手間がかかる・見栄えが悪い、という難点がありました。

これらの問題をクリアすべく生まれたのが現行の「キソ点検口」です。しっかりした断熱性能と高い気密性をキープできるようになり、お客様から好評をいただいてきました。が、強いて弱点をいえば「基礎打設時にしか設置できない」こと。「もっと設置タイミングの自由度が高い製品がほしい」というさらなるリクエストをいただくようになり、「後付け」ができる点検口を開発するプロジェクトが2015年春にスタートしました。

限りなく100%対応に近づく努力と、開発最終段階での、思い切った飛躍。

現場ごとに人通口の寸法や基礎の幅はバラバラです。後付けタイプはすでにできあがった基礎にはめこむ形になるため、どこまで対応させるかの線引が難しいところでした。お客様への聞き取り調査と同時に、250件もの図面から仕様データを調べていくと、内基礎の高さは350mmと400mm、内基礎間口は600mm、基礎幅は150mmと120mmが多いという現状が見えてきました。世の中に存在する人通口のうち、人が通りにくい非現実的な寸法のものを除いて、限りなく100%対応できるよう、対応可能な範囲を引き延ばす努力を重ねていきました。

また、素材は発泡スチロールを主体に、強度保持のために樹脂も使用。枠の側面に補強用のリブを多めに入れたり、下部の角を前もって斜めにカットするノロ除け対策を施したりしました。これらは後付けタイプならではの一工夫といえます。また、取手が取れにくいように従来のスライド式のものから変更したり、開閉方法を扉面に記載したり、枠をカットしやすいようにガイドを付けたりするなど、大工さんによる施工を想定して、より使っていただきやすい工夫を加えていきました。

実は、開発直前に大胆な転換がありました。
現行品の形状をベースに開発を進めてきたのですが、最後の最後で堅牢性に問題が浮上しました。というのも、現行品の形状は、構造上浴室側の基礎の立ちあがりに貼り付けるようになり、人が出入りする時に枠に身体があたって倒れてしまうと元に戻せなくなってしまう可能性が出てきたのです。左右の基礎に引っ掛けて施工する仕組みにすると部品が増えてコストアップしてしまう。どうしても現行品の延長では解決できないとわかり、思い切って一から見直すことになりました。それがなんと設計完了目標日の約一ヶ月前のこと。企画・開発のチームが一丸となり、基礎立ち上がり部分の入口側に引っ掛けるスタイルをひらめき、結果的には従来品とは全く違う形状で堅牢性を確保して完成へと一気に漕ぎつけました。

使いやすさとともに、商流によるメリットも実現。さまざまなシーンで信頼を生み出せる製品に。

後付けタイプが生まれたことで、当社の主商流である建材ルートにのせてご案内することができるようになりました。流通業者様や工務店様にとって、断熱材などの建材と同じ納入タイミングでお取り扱いしていただけるようになり、その点も高く評価していただいています。また、家の完成を心待ちにして工事を見学される施主様に対して、「見えない部分も丁寧に施工してくれた、この工務店に頼んで良かった」という信頼を生み出す、ひとつのきっかけにもなっています。床下の見えない部分とはいえ、簡易的な処理で済まされているのをご覧になるよりも、扉のある点検口が付いていた方が安心できることでしょう。万が一簡易的な塞ぎ方をしていて、施主様から指摘されたとしても、後付けタイプならその時点でも対応できます。このような柔軟性も大きなメリットではないでしょうか。

入社2年目だった企画担当者にとっては、本製品が初めての企画開発。課題を克服した自負はありますが、現状の基礎に対し100%対応できているわけではないことを決して忘れず、これからもお客様からの声に耳を傾け、改良を重ねていきます。製品も、そして企画開発に携わる自分自身も、進化していきたいと決意しています。