小屋裏換気とは

小屋裏換気とは

小屋裏換気とは

小屋裏換気とは、住宅の屋根と天井の間にできる小屋裏空間に外気を取り入れて換気をすることを言います。夏場の小屋裏の温度は60℃や70℃まで上昇すると言われており、このような状況では天井に断熱材を敷き詰めていても室内温度の上昇は避けられません。また、夜になって小屋裏温度が低下すると、空気中に含まれる水分が放出されて木材や断熱材に内部結露を生じ、カビや腐朽の原因となってしまいます。したがって、快適な温度環境と長持ち住まいを実現するためには、適切な小屋裏換気を施すことで小屋裏の温度上昇を可能な限り抑制し、湿気を逃がすことが求められます。

小屋裏換気と言っても何か特別な装置を使うわけではありません。軒裏や棟などに換気部材を取り付けることで空気の入口と出口を作り、自然な空気の流れを作り出すことで小屋裏空間を換気します。

この空気の流れを生み出すメカニズムは、
1)空気の入口と出口の間に生じる風圧力差
2)温度差によって生じる気流
の二つで説明することが可能です。ここでは、風圧力による換気と温度差による換気について、その原理を分かりやすく説明します。

風圧力による小屋裏換気

建物に対して風が吹くと、風上側では風のもつ速度が直接壁面を押すため、大気圧より高い正圧が生じます。一方、側面や風下側では、風によって空気が引き剥がされるように流れていくため、大気圧より低い負圧が生じます。屋根面についても同様の原理で圧力差が生じます(図1)。このように、建物に対して風が吹いたときにはじめて建物各部に圧力差が生じます。

図1建物周囲の風の流れと風圧

図1 建物周囲の風の流れと風圧

建物に風があたると、風上側には圧縮力が、風下側および側面には引張力が作用し、室内圧と外気との間に圧力差が生じます。これらの分布は建物の形状によって異なり、風洞実験で求められます。風によって生じた圧力のうちのある割合が、建物を押したり、あるいは引いたりする風圧力となって作用します。この割合のことを風圧係数(あるいは圧力係数)と呼びます。一般的な断面分布では、風上側での風圧係数はおよそ0.6(正圧)、風下側ではおよそ-0.4(負圧)となるとされています(図1)。これにより、風上側の軒天換気材には正圧が生じ、棟換気部材や風下側の軒天換気材には負圧が生じ、両者に圧力差が生じます。すると、正圧が生じている軒天換気材が小屋裏換気の入口となって外気が流入し、負圧が生じている軒天換気材や棟換気が出口となって小屋裏の空気が流出します(図2)。

このように、風によって住宅の各部分に自然に生じる圧力差を考えて、適切な位置に換気部材を取り付けることで、小屋裏換気が実現されています。

図2風圧差による空気の流れ

図2 風圧差による空気の流れ

温度差による小屋裏換気

空気が暖められると膨張し体積が大きくなります。これは、空気を構成する分子が温度上昇によって活発に動き回るためです。体積が大きくなると同時に密度が小さくなるため、暖められた空気は周囲の空気よりも軽くなり、浮力が発生して上昇します。

前述の通り、小屋裏空間にある空気は太陽からの熱を受けて高温になり、浮力によって上昇します。この現象を利用して棟換気などから高温の空気を抜き、それを補う形で軒天換気口や壁体通気層下部の開口などから冷気を吸気するのが、温度差を利用した小屋裏換気の原理です(図3)。

図3温度差による空気の流れ

図3 温度差による空気の流れ

一般に、躯体内外の空気の比重量に差があればあるほど(すなわち温度があればあるほど)圧力は大きくなります。また中性帯(※)から換気口の位置(高さ)が離れれば離れるほど圧力は大きくなります。

※中性帯: 圧力がゼロとなる高さのこと。建物の上下に同じ大きさの開口部がある場合には、その中間に高さが中性帯になります。また、その高さは、開口部の大きいほうに近づく性質があります。

参考資料

「風と家 -風はなぜ家の中を流れるかー」坂本弘志 著(宇部貿易株式会社)

「躯体掃気通論」坂本弘志 著(日本窯業外装材協会)

住まいの水先案内人: http://www.ads-network.co.jp/zairyo-kouji/26.htm

住宅金融支援機構「【フラット35】対応 木造住宅工事仕様書」