小屋裏空間で求められる住宅品質 vol.1 「小屋裏換気と気密層の確保」
住宅品質の安定と向上のためのコンサルティングNEXT STAGE様による連載コラム

なぜ小屋裏換気が必要?

NEXT STAGEは、住宅会社の自社品質基準の構築や、建築現場での第三者監査など「住宅品質の安定と向上を具現化する」ためのコンサルティング事業を展開しています。そのため住宅会社の設計図書や工事中の現場を見る機会が多いのですが、「住宅品質」という視点で住宅を見たとき、全国的な傾向として、小屋裏空間の計画や施工を、やや軽視しているように感じています。 「小屋組材の劣化の軽減」をはかるための措置として、品確法の性能表示やフラット35では「小屋裏換気」について規定が明確化されています。性能表示やフラット35を利用する住宅では、規定通りの計画・施工をしていると思われますが、それ以外の住宅は建築基準法に規定がなく違法にはならないため、小屋裏の換気計算を行い、それが確実に機能するような施工管理をしているところは少ないのではないでしょうか。

小屋裏換気の規定について

小屋裏換気が必要な理由は大きく分けると2つあります。1つ目は、小屋組材の「耐久性を保つ」ためです。小屋組材を劣化させる要因は、「雨漏り」と「湿気(結露)」いわゆる「水」と言われています。雨漏りは、屋根の防水により対策を取ることができますが、湿気(結露)に関しては、構造材を乾燥させ湿気を外気に放出する「小屋裏換気」が有効です。小屋裏換気が機能していない住宅は、小屋裏空間の湿度が外気より高くなります。特に冬は気温が低く結露の発生しやすい環境となるため、小屋組材の劣化を促進させる恐れがあるほか、繊維系断熱材が結露水を含み断熱性能を下げたり、天井に水が溜まり仕上げ材をカビさせたり等いろいろ問題を発生させるリスクが高くなります。

2つ目は、小屋裏空間に「熱がこもらないようにする」ためです。夏は、太陽の日射によって屋根や壁が熱され温度上昇し、小屋裏空間も高温になってしまいます。その影響で、居室の冷房効率を下げてしまうことや、夜に寝苦しくなり居住者にストレスをあたえることがあります。建物の耐久性だけではなく、冷房費や人体の健康、心理的にも影響を与える恐れがあるのです。

小屋裏換気だけではだめ!

小屋組材の耐久性を保つための湿気対策は、小屋裏換気で湿気を排出することが有効と述べましたが、もう一点気を付けるべきことがあります。それは小屋裏へ「湿気を流入させない」ように気密層をしっかり確保することです。最上階の天井の気密層や間仕切り等の気流止めの施工がおろそかだと、室内で発生した水蒸気が小屋裏へ流入していきます。NEXT STAGEの顧客ビルダーは、防湿フィルムに包まれたパッケージタイプの繊維系断熱材を使用する場合は、「断熱材の隙間」「気密層の破れ」「適切な気流止めの施工」に自社の品質基準を定め、施工・チェックを行っています。 問題があると考えれらる不備事例をいくつかご紹介させていただきます。

断熱材との間に隙間がある事例(左・右)

断熱材との間に隙間がある事例
断熱材との間に隙間がある事例

断熱材の防湿シートが破れている事例(左・右)

断熱材の防湿シートが破れている事例
断熱材の防湿シートが破れている事例

間仕切り上部の気流止めが入っていない(左)(上)気流止めの防湿シートが不適切な事例(右)(下)

間仕切り上部の気流止めが入っていない
気流止めの防湿シートが不適切な事例

次回のvol.2では小屋裏換気の仕組みや、軒裏からの雨の吹き込み対策などについてご紹介致します。

記事提供

株式会社ネクストステージ

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