小屋裏空間で求められる住宅品質vol.2「設計段階から小屋裏環境を良くする3つのポイント」

「品質」という言葉を聞くと現場における施工品質だけをイメージされることが多いのではないでしょうか。

実は、「住宅」の品質というものを考えるとき、現場の施工品質の管理だけでは対処はできなく、企画や設計の段階から考えていかなければ、品質の安定と向上を図ることはできません。

今回は、小屋裏空間の住宅品質を考える上で、設計段階で押さえておくべきポイントを3つ書かせていただきます。

POINT.1

小屋裏換気の入口と出口を明確にし、空気の流れを考えた配置とする

小屋裏換気の仕組み

一般的に空気の出入口となる換気孔を「軒裏」や「妻壁」、「屋根の棟部」に設ける換気方法があります。「温度差」と「風圧力」で発生する小屋裏換気の仕組みを理解した上で、建物の工法や形状に合った換気方法を選定し、湿気や熱が滞留しないように配置計画を考えましょう。

「小屋裏換気の仕組み」について詳しく見る

POINT.2

必要な換気量を確保する

換気量については、勘や経験だけに頼らず、自社でしっかり計算基準を定め、実践することを推奨します。

小屋裏換気量は、換気孔の面積の大小によって変わってきます。木造住宅工事仕様書(フラット35)等では、必要換気量を確保するために、採用する換気方法に応じた「換気孔の有効換気面積」の指針があります。この指針に定められている値以上の面積は、最低でも確保して欲しいところです。又、壁の通気層を通る空気を小屋裏へ逃がす納めをされている場合は、壁から放出される水蒸気も小屋裏へ移動してきますので、そのあたりの考慮も必要になります。

「小屋裏換気計算の基準と考え方」について詳しく見る

POINT.3

構造躯体への雨水の侵入を防ぐ

換気孔からは、外気と共に雨が吹き込むことがあります。台風などの強風で風圧が強い日は特にリスクが高く、小屋裏空間だけではなく、壁体内や室内にまで水が浸入してくることがあります。雨の吹込みをゼロにすることは難しいかもしれませんが、リスクを低減する措置の検討は必要です。

<雨の吹き込み対策事例①>
壁の透湿防水シートを軒裏まで張り上げる

作り手側の製造責任として、お客様が安心し、満足できる品質の住宅提供を心がけている住宅会社が、標準的に採用していることが多い施工方法です。透湿防水シートを小屋裏換気の経路を塞がない程度に、軒天レベルより上に張り上げています。軒裏換気孔から吹き込んだ雨水は通気層を伝って排出され、構造躯体を濡らすリスクを低減する措置です。又、透湿防水シートの張り上げをルールとして決めていても現場での施工ミス(施工忘れ等)は起こりうるので、設計図書への表記をお勧めします。

◎優良事例
軒裏まで透湿防水シートが張り上げられています。

優良事例

◎優良事例
軒裏が無い納めでは、構造材が隠れる位置までしっかり張り上げをしています。

優良事例

△設計の改善検討が必要な事例
透湿防水シートの張り上げが、軒下で止められています。雨が吹き込み 構造材が濡れたり、透湿防水シート裏に水が廻ってしまったりする心配があります。

設計の改善検討が必要な事例

×現場施工の不備事例
透湿防水シートがめくれているため、吹き込んだ雨水がシート裏へ浸入する危険が大きいです。又、壁の通気の妨げにもなります。

現場施工の不備事例

次回のvol.3では、引き続き、雨の吹き込み対策事例をご紹介させていただきます。

記事提供

株式会社ネクストステージ

住宅品質向上のリーディングカンパニー

株式会社NEXT STAGE

住宅会社の自社品質基準の構築や、建築現場での第三者監査など「住宅品質の安定と向上を具現化する」ためのコンサルティング事業を展開。

https://nextstage-group.com/