小屋裏空間で求められる住宅品質vol.8 「結露を防ぐには、断熱・気密工事の品質も求められる」
小屋裏空間への湿気の流入防止
vol.1でも触れさせていただきましたが、小屋組材の耐久性を保つための湿気対策は、「小屋裏換気による湿気の排出」と「天井気密層による小屋裏への湿気の流入防止」です。最上階の天井の気密・防湿処理や間仕切り等の気流止めの施工がおろそかだと、室内の水蒸気が小屋裏へ流入していきます。また、室内空間の湿度が高いケース(加湿器やポータブルストーブの使用など)では、小さな不備であっても小屋裏空間への水蒸気が流入する恐れがあります。結露対策は、湿気の排出と湿気の流入のバランスがとても重要です。
一度バランスが崩れ、寒冷地に建つ木造住宅で、大きな問題となった事例もあります。
①小屋裏が結露→②結露水が軒天に流れ凍結→③軒天換気の有孔ボードの孔が塞がる→④小屋裏換気が滞る→⑤湿気の排出が減る→⑥結露が加速的に増える→⑦天井から大量の水が垂れてきた。
自社の品質基準として天井部位における「断熱材の隙間」「気密層の破れ」「気流止めの施工」について定め、施工の品質管理を行うことは、小屋裏換気を行うことと同様に重要です。
外壁も重要。気密工事は天井だけではなく壁も。
壁体内の水蒸気を屋外へ排出する方法の一つとして壁通気構法があります。→外壁通気構法のコラムはこちら
通気層の出口をどこに設けていますか?通気層の出口を小屋裏空間に設け棟換気口などから排出する場合は、設計品質の点では通気層から流入する水蒸気も加算されるので、その分小屋裏換気量を増やす等の配慮が必要です。また、小屋裏だけではなく、施工品質の点では壁や、コンセント廻りの防湿処理の精度を高めることが重要になります。
生活環境へ与える影響
太陽光(輻射熱)によって屋根仕上げ材の温度が上昇し、それに伴い小屋裏空間内の温度も上昇します。小屋裏換気は湿気対策としての目的だけではなく、小屋裏空間の温度上昇を緩和させる目的を持っています。これは小屋裏の温度上昇が生活環境へ悪い影響を与える要因となるからです。「室温が上昇して暑い」「エアコンの利きが悪い」「夜暑くて眠れない」など生活している人に与える不快感はお客様とのトラブルへと繋がっていきます。そしてこれは、小屋裏換気が機能していても天井断熱の施工がおろそかだと同じく起きる問題のため、合わせて品質管理を求められることになります。 設計品質の点では環境に適した断熱材の性能と厚みの選定、施工品質の点では断熱材の周りに隙間が空かない施工とする必要があります。
小屋裏空間の維持品質
設計品質・施工品質という視点で事例紹介などをさせていただきましたが、住宅品質の中には「維持品質」というものもあります。優良な住宅会社では、「点検やメンテナンス」などの維持管理を容易に問題なく行うための配慮を設計に組み込んでいます。小屋裏空間であれば、天井や壁を壊さずに点検できるか?点検しやすい位置か?点検口の数は適当か?等々。定期的な点検やメンテナンスは建物を長持ちさせる他、「住宅の適正な評価を得られ資産価値を高める」効果もあります。 小屋裏空間で求められる住宅品質というテーマで8回に分けて発信させていただきましたが、家づくりの参考にできる情報はありましたでしょうか。今回の連載が住宅会社様の住宅品質改善・向上のお役に立てば幸いです。
記事提供
住宅品質向上のリーディングカンパニー
株式会社NEXT STAGE
住宅会社の自社品質基準の構築や、建築現場での第三者監査など「住宅品質の安定と向上を具現化する」ためのコンサルティング事業を展開。
https://nextstage-group.com/