第5話
〈 第5話 〉
住宅のレシピづくりの流れ
古川:予告編で「断熱計画は料理のレシピづくりに似ている」とお伝えした話を覚えていますか?これまでレシピづくりに必要な基本を学んできましたので、ここからようやくその詳細をお伝えしたいと思います。
ひだまり:ついにレシピづくりのお話ですね!待ってました!
古川:レシピづくりの過程を一覧にしてみました。レシピを作るまでには大きく3つの工程を通ります。①調理場の確認 ②料理と材料の検討 ③材料・手順の決定とレシピの書き起こしです。これを住宅に当てはめると①土地や周辺環境の確認 ②住宅プランと部材の検討 ③部材決定と詳細図面の作成となります。

古川:簡単に言い換えれば、①前提条件の確認 ②概要の検討 ③詳細の決定 という感じですが、どうでしょう。イメージが湧きますか?
ひだまり:またまだ全然イメージがつきません…。
古川:そうしたら料理のレシピづくりに合わせて見てみましょう!右列に料理の流れを載せておきますから、理解の助けにしてください。

古川:それでは、①土地や周辺環境の確認です。家を建てたいお客様と話をして、ある程度の要望を伺ったらプランの作成になるのですが、その前に家を建てる場所(土地や周辺環境)を確認しなければなりません。調理場の広さや機材を確認しなければ、料理によっては作れない物もあるかもしれないというのと同じです。
ひだまり:オーブンがないと作れない!みたいな料理もありますよね。
古川:家を建てる場合、土地の法的な地域区分や土地の広さ、建物の大きさ、外観など、建築地域や周辺の環境がかかわります。加えて、安全に長く暮らすためにその地域のハザードマップなども見ておく必要がありますし、省エネ性だと、土地の向き(方位)や断熱地域区分・地域の天候の特性などを調べておくことが大切です。
ひだまり:前提条件の確認は、安全で快適に暮らす計画のベースになるので、欠かせない工程ということですね。
古川:このような現地調査から土地の建築条件や環境が明らかになり、その土地でしてはならないことや避けた方が良いことなどが把握できます。そうなると、結果としてお客様の要望をかなえられない部分も出てきてしまいますが、それをふまえて理想に近い家が建てられるよう住宅プランや部材を検討していきます。

古川:では、次に②住宅プランと部材の検討です。例えば、プランには安全に暮らすための耐震性、お客様要望の間取りやデザインの意匠性などありますが、この時に楽に暮らすための快適性や省エネ性も一緒に検討を進めます。このような全体を通じたプラン組みが、後からやり直しが少なくなる秘訣ですね。料理に例えるなら「この材料があるなら、肉じゃが作ろうかな?材料はほぼ一緒だから、もし気分が変わったらカレーにしちゃおう♪」と先のことも検討しておくと、変えたくなった時にあたふたしませんが、「なにか食べたいから、冷蔵庫にあるものでとりあえず作り始めちゃえ、エイ!」とやって美味しくなるかは賭けですし、軸になるものもなく結局何かわからないものが出来上がってしまうような感じです。
例が多くなりましたが、前提条件をクリアしたうえで、満遍なくプランを検討し軸をつくることで、一部例外はあれど、見た目も中身もお客様の要望に一番近い形で実現できるプランが完成するということです。
ひだまり:プランは概要くらいに思っていましたが、そのあとの検討の軸となるので、事前の準備やヒアリング、設計検討は慎重にする必要があるのですね。
古川:必須要件やお施主様の希望(意匠性・快適性・間取りなど)がおおよそ決まったら、今回は「結露しにくい断熱レシピをつくる」というテーマなので、断熱ライン(住宅の内部と外部の熱的な境界線)や断熱方法など省エネ性を設定する流れを見ていきましょう。
③部材決定と詳細図面の作成までを含めて、図で一気に説明するので、料理の流れと併せて一通り見てみてください。


古川:ざっと流れを図示してきましたが、「効果的で生活に合った省エネ性の検討」の部分だけを抽出するとこうなります。

ひだまり:うわぁ、ぴったりはまりましたね!料理の流れと併せて見ていたら、理解できました。
古川:理解してもらえて安心しました。ここから先は★を付けた部分を重点的に解説しようと思っています。わからないことがあればすぐに聞いてくださいね!
次回は「有効に働く断熱ラインを考える」を解説します。よく「屋根断熱か天井断熱どちらにしたらよいと思いますか?」という質問をもらうことがあります。例えばこちらの物件、ひだまりさんだったら天井断熱か屋根断熱のどちらを選択しますか?また、その方法を選んだ理由は何でしょうか?
断熱ラインの検討は意外と奥深く、結露しない住宅設計の肝になる部分といっても良いです。先ほどの質問に対する私の考えや、断熱ライン検討における優先順位などもお伝えする予定ですから、楽しみにしていてくださいね。


※こちらの内容は2025/02/14に配信したメルマガを元に作成しております。
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